三脚部だけで実測800gと軽く十分な最伸高も備えていることから旅のお供として重宝している『SLIK スプリントPRO GM』ですが、調子にのってしっかりめの雲台に変えるなどしたところ登山に携行するには微妙な重たさになってしまったうえ、重心も高くなり不安定さが増大する結果に…。
一括りにトラベル三脚といっても、重量との兼ね合いからある程度の割り切りを許容出来る「山行用」と確実に役目を果たすことが期待される「旅行用」を両立させようということに無理があると今更ながら気がついたので、次の旅行に向け少ししっかりしたトラベル三脚を調達することにしました。
10数年前はトラベル三脚なんて言葉自体一般的ではなく小型・軽量である程度しっかりした物というとスプリントPRO以外にあまり選択肢はありませんでしたが、ここ数年各社から様々な製品がリリースされてきたため現在は種類も豊富。ネットである程度下調べは行ったもののこればっかりは実際に手に取ってみないと分からないので、カメラ量販店の売り場をハシゴして悩んだ末に購入したのがVANGUARD(バンガード)社の『VEO 2 264AB』。
VANGUARDは台湾発の新興カメラアクセサリーメーカーで欧州を中心に高い評価を得ているようですが、国内ではいかんせん知名度が低く情報が絶対的に不足しているようなので簡単ながらファーストインプレッションを記しておくことにします。
いい意味でトラベル三脚らしからぬトラベル三脚
まずはお約束の開梱の儀から。
パッケージ下方から中身を取り出します。
内容物は三脚本体、キャリングケース、クイックシュー、ローアングルアダプター、雲台交換用の六角レンチのほか説明書や保証書などの冊子類。
三脚に付属するキャリングケースは薄手のナイロン製。クッションが入っているのは底部分だけで高級感はありませんが、見た目は上々。ベルトは長さの調節が可能なので斜め掛けにも対応可能です。
VEO 2シリーズには素材(アルミ/カーボン)や脚の伸縮段数(4段/5段)の違いで複数のバリエーションが用意されているのですが、今回はトラベル三脚の中でもより安定感のあるものを得るのが目的だったので敢えてアルミの4段タイプを選択。
カラーはアンスラサイト(グレー)。その精悍なデザインにはVANGUARD社の拘りを感じさせます。
重量は実測1.6Kg。三脚はそれなりに自重のある方がブレないとはいえ、重過ぎて持ち歩くのを躊躇うようではトラベル三脚の意味がありませんのでこれくらいがちょうど良い重さだと思います。(無論、機材にもよりますが…)
また、折り畳まれた状態での寸法は幅が約9.5cm、長さは44.5cm。
4段ながら45cmを切っているので機内持ち込み可能なスーツケースにもなんとか収まりそうです。
脚部はパイプ径26mmでナットロック固定式。うち1本にはラバーグリップが装備されています。アルミ製の三脚は寒冷地でキンキンに冷たくなってしまうので、冬場に素手で展開・撤収を行う際にその恩恵を被ることでしょう。
標準装備の石突はゴム製でスパイクは別売り。出来ればこれは同梱しておいて欲しかった…。
それでは三脚を展開していきます。
大半のトラベル三脚が脚を反転させることでコンパクトに折りたたむ方式を採用しているのに対し、VANGUARDはセンターポール(エレベーター)を反転させるという珍しい方式を採用しています。
一見突飛な発想にも思えますが、1アクションで収納・展開が完了するので実際に使ってみると大変に便利。店員さんはこれを「コアファイターみたく…」と仰ってましたが、それ…きっと若者達には伝わらない。(苦笑)
三脚ベース部に可動部を設ける構造のためセンターポールのガタツキを心配される方もいらっしゃるかと思いますが(実際わたしがそうでした)、展開した状態ではビクともしません。
ナットロックはロックtoロックが1/4回転。最近のナットロック式三脚は脚パイプが回転しない仕様なので、3箇所のナットロックをまとめて握って手首を捻るだけ一機にロックや解除が出来るのでレバー式より素早く伸縮させられます。
設置状態での最伸長は雲台込みで1550mm。身長178cmの自分がファインダーを覗きこむにはちょっとだけ高さが不足しそうですが、最近三脚利用時はライブビュー撮影を基本としているので困ることはないでしょう。
付属の自由雲台『VEO 2 BH-50』はその名が示す通りVEO 2シリーズの三脚との組み合わせを前提に開発されたもののようですが、セットものの雲台にありがちな手抜き感は皆無。見た目も秀逸で普通に格好いいです。
アルカスイス互換のクイックシュー方式が採用されており台座には水準器を装備。作りは驚くほど堅牢で、3つの専用のノブによるロック、パン、フリクションコントロールが確実に動作します。
付属のクイックシューは必要最小限の大きさで固定用のネジはDリング付き。
現在の愛機『Nikon D500』には若干小さすぎる感が否めなかったので、以前購入した中華製クイックシュー『MENGS PU-70H』を介して固定。耐荷重8Kgを謳うだけあって、1.5Kgにも満たないD500+標準ズームの組み合わせなんて屁でもありません。
ニーニッパこと『Nikon AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II』を取り付けた計2.5Kgほどの装備もまったく問題なし。
ここまで来るともはや中型三脚の領域でしょうが、そこまでカバー出来ちゃうのがこの三脚の凄さ。
旅行時や普段使いの三脚として今後大いに活躍してくれそうな予感がします。
まとめ
今回初めて手にしたVANGUARDの三脚でしたが、独創的な設計や工作精度の高さにはただただ感心するばかり。
ユーザーの撮影スタイルや趣味趣向により三脚に求められるものは変わってくるので、「トラベル三脚ならコレ」などと軽々に口にするつもりはありませんが現在三脚の購入を検討されているのならば一考に値するメーカーだと思います。