これまで自宅では玄人志向の『玄箱』やBuffaloの『Linkstation LS-XH1.5TL』、録画機を兼ねた『nasne』などをファイルサーバとして活用してきましたがいずれも安定性と信頼性がいまひとつ。
不満を感じながらも騙し騙し運用を続けてきましたが、増大する一方のデータにバックアップが追いつかなくなってきたこともありいい加減に刷新を図らねば…ということで、Synologyの2ベイNASキット『Diskstation DS216play』とNAS用の定番ハードディスク『WD Red WD30EFRX』(3TB)2台を購入。
NASを選ぶにあたってはSynologyのほかQNAPやASUSTARの製品も検討したのですが、信頼性や使い勝手、機能拡張性の高さ、コストパフォーマンスなど総合的な評価でDS216playを選択。
DS216playは上位機種に迫るCPUとメモリを備えていることに加え、新たにハードウェアトランスコードエンジンを搭載することでホームユースでのマルチメディア対応も大幅強化されたとあって注目度も高く昨年末の発売以来品薄傾向が続いていますが無事に入手出来ました。
あわせて5万円を超える出費でお財布の中に寒風が吹きすさんでますが、大切なファイルが消失してしまってからでは取り返しがつかないので必要経費ということで自分を納得させてます(苦笑)。
開梱・ハードディスクの組込み
DS216playのパッケージはダンボールの質感を活かしたシンプルなデザインで案外コンパクト。
同梱品は本体の他、インストレーションガイドと保証書、ACアダプタと電源ケーブル、LANケーブル、HDD及び本体カバーを固定するためのネジが2種類。
ネジは手回しローレットではないので別途プラスドライバーを用意しておく必要があります。
本体前面には稼働状況を示す4つのLEDインジケータと電源ボタン。電源ボタンにもLEDが埋め込まれているようですね。
Synologyは人気モデルとなった『DiskStation DS215j』に代表されるよう個人向けNASに白い筐体を採用していますが、マルチメディアセンターとしての利用も想定されるDS216playはAV機器とのマッチングを意図したのか例外的に黒。理由はどうあれ汚れや劣化の目立つ白よりも黒の方が好み。表面にはシボ加工も施されているので指紋や細かな擦り傷は目立ちにくいものと思われます。
側面のSynologyのロゴはスリット状の加工が施されていて内部冷却用の吸気口を兼ねている模様。
背面には内蔵する9.2cmファンの排気口と各種ポート。ケンジントンロックの取付穴もこの位置に。
USB3.0とUSB2.0のポートはそれぞれ1つずつ。LANポートは当然1GbE対応です。
続けてHDDを組み込むために本体を横にしてサイドカバーを前方へスライド。
購入直後はカバーがネジ止めされておらずドライバ不要で簡単に内部にアクセス出来ます。
CPUやメモリが載ったメイン基板は逆サイドに収められているため、HDD格納スペース側はスッキリしてますね。
ファンの手前にあるサブ基板上の2つの黒い端子がHDDを繋ぐSATAコネクタ。ここにHDDを直挿ししていきます。
今回用意したのは『WD Red』シリーズに属するWestern Digital社製のHDDで容量は3TB。
24時間365日の連続稼働を想定して耐久性・信頼性を高めるとともに、消費電力の抑制やRAID環境への最適化が図られた「NASシステム用」の製品で実績も十分なので今敢えて他の製品を選ぶ人も居ないでしょう。
前方からスライドさせるようにして2台のHDDを順にコネクタに挿し、両サイドをネジで固定。
カバーを戻して背面の上下2箇所もネジ止めしたら本体側の準備は完了。
LANケーブルとACアダプタを繋いで電源を投入すると「STATUS」のLEDが点滅を始め、接続に問題がないことが確認されると残りのLEDが緑色に点灯するのでそれを確認してセットアップ作業へ。
セットアップ
次にブラウザベースで操作可能なSynology製NASの専用OS「DiskStation Manager」(以下、DSM)をインストールし、ソフト側の環境を整えていきます。
手元のPCから find.synology.com にアクセスすると今回新たに導入しようとしているDS216playが検出されます。
ステータスが「未インストール」になっていることを確認して「接続」をクリック。
「設定」をクリック。
DSMのインストールを促されるので「今すぐインストール」をクリック。
接続したHDDが初期化される旨の確認メッセージが表示されるのでチェックを入れて「OK」すればDSMのインストールが始まります。
インターネットを経由してのダウンロード作業を伴うため回線状況により要する時間は変わりますが、うちの場合は10分弱で完了。
インストールが終わると自動で再起動がかかり初期設定画面に移行します。
「次へ」。
最初に管理者アカウントの入力を求められるので任意のユーザ、パスワードを設定。下のチェックを入れておくと動的IPでの運用下でも find.synology.com を経由することでDSMへ容易にアクセス出来るようになります。
DSMはセキュリティ対策や機能向上のためマメにアップデートが提供されるので、それらがリリースされた際の対応を選択。
推奨の機能パッケージが示されるので、「インストール」または「この手順をスキップする」を選択。機能パッケージは追加も削除も後から自由に行えるので、良くわからない場合や始めてSynology製NASに触れる場合などはとりあえず「インストール」しておいて問題ないでしょう。
同意確認のチェックを入れて「OK」。
最後に外出先から自宅のSynology製NASにアクセスしたい場合に活躍するQuickConnect機能の設定。利用にあたっては専用アカウントが必要になるので必要な情報を入力して「次へ」。
アカウントの重複などがなく無事に登録が完了すると自分専用のURLが表示されます。
これで初期セットアップ作業は完了。ユーザーの追加やファイル共有の権限、機能パッケージの追加・削除、その他諸々の設定はDSM画面上で行います。
DSMはレスポンスも良くWindowsのデスクトップのように直感的な操作が可能なのでストレスなく操作することが出来ます。DSM上で参照出来るヘルプの内容も充実しているので、よほど特殊なことをやろうとしない限り迷うこともないでしょう。
古いNASからの乗り換えにも最適
さっそく古いNASからまとまったデータを移行してみましたが、マルチメディア機能の強化にあわせてCPUやメモリも強化が図られているのでDSM上で確認出来るCPUやメモリのパフォーマンスは常に余裕がある状態。パフォーマンスの実測値を見てもシーケンシャルリード/ライトとも100MB/sに迫る値を叩き出しており家庭向けNASとしてはきわめて優秀。
かなり負荷をかけた状態でもHDDのアクセス音やファンの回転は静かなままで排熱もそれほど熱くなることはありませんでした。
GPUを駆使したリアルタイムエンコードも試してみましたが、途中途切れるようなこともなくスムーズに視聴でき十分に実用的。今年登場予定のDSMの新バージョンではマルチメディア機能の大幅な強化が予定されているので、それらとの組み合わせによる活用の幅の広がりにも大いに期待がもてます。
個人的に気になる消費電力は最も高いときで15Wほど。
以前使っていたBuffalo『Linkstation LS-XH1.5TL』はHDDを1台しか積んでいなかったにもかかわらず最大消費電力が25W近くあったことを思えば隔世の感…。24時間稼働が前提のNASだけにこの恩恵は大きい。
国内ではお世辞にも知名度の高くないSynologyですが、その歴史はQNAPより古くソフトウェアの開発能力の高さには定評があります。つい先日も有償ながら同社の全NAS製品向けにDTCP-IP対応の追加パッケージを提供することがアナウンスするなど、旧モデルのユーザーを無下にしない姿勢も好印象を覚えます。
2016年モデルの先陣を切って登場したDS216playは独自のアプローチでマルチメディア対応を強化し、ホームユースに於ける更なる勢力拡大を図った野心的な製品。3万円代前半という戦略的な価格設定に加え、迅速なセキュリティパッチの提供や機能強化、バグ対応を行う同社のサポート体制も勘案すると現時点でのベストバイと言って過言ではなさそうです。