コロナ禍によるリモートワークの普及を経て、自社のオフィスでもフリーアドレスを前提とした大規模なレイアウト見直しを実施。
それを機にこれまで有線LANしか敷けていなかった離れのフロアにも無線LANを導入することとなり、ヤマハ の『無線LANアクセスポイント WLX212』と『PoEインジェクター YPS-POE-AT』を2セット購入。独力で導入・セットアップを行いました。
同製品に関しては後継モデルの『無線LANアクセスポイント WLX222』が10月にリリースされていますが、今回はオフィス用途ということもあり敢えて枯れた旧モデルをチョイス。
ヤマハのネットワーク製品との付き合いは20年を超えますが、同社の無線LAN製品は比較的歴史が浅くわたしも触るのは今回が初めて。ルータ製品に比べググって得られる情報も限られているので、気付いた点を備忘録がてら残しておくことにします。
YAMAHA WLX212のメリット(良いところ)
「クラスター管理機能」で複数台導入時の管理が楽
WLX212には管理方式としてオンプレでの一括管理を前提とした「クラスター管理機能」(無償)と、クラウド方式による「Yamaha Network Organizer(YNO)管理」(有償)の2種類が存在しますが、外部から設定変更や監視を行う必要がなければ基本的に「クラスター管理機能」を選択することになります。
クラスター管理機能に対応したヤマハの無線AP製品をネットワーク上に配置すると、仮想コントローラーを通じた一元的な設定・管理が行えるようになります。設置するAPが1台だけだとIPアドレスをひとつ余計に消費するだけであまりメリットはありませんが、複数台で運用する際には個々にSSID等の設定をする手間が省けて大変便利。運用中に後からAPを増設する際も同一ネットワークに新しいAPを接続するだけで設定が自動同期されるため、管理者がやることは必要に応じて任意のIPアドレスを設定するくらいで済みます。
ちなみに…誤って仮想コントローラーと物理APに同じIPアドレスを設定してしまうとおかしなことになるので要注意。(経験者は語る。苦笑)
RADIUSサーバ機能搭載で手軽に認証
法人向けのアクセスポイントではWPA/WPA2/WPA3 エンタープライズによるユーザ認証の仕組みが欠かせません。
WLX212なら別途 RADIUSサーバーを用意せずともユーザーごとにID/PASSWORDを発行し認証を行うEAP-PEAP方式のほか、クライアント証明書を用いたEAP-TLS方式が利用可能。また、PAPによるMAC認証にも対応しており端末毎の接続制限も可能です。
本機能は仮想コントローラー上で管理されるので、複数APによる運用時も設定反映の手間は必要最小限で済みます。
接続の安定性や電波の飛び
最大接続端末数100台を謳うだけあって30~40台程度で使用している現在の環境下で接続安定性に関しては文句なし。
電波に関しても環境に応じて指向性アンテナと無指向性アンテナを切り替えて使用できることから十分に行き届きます。
お試しで使った某社製の家庭用APではまったく通信の出来なかったスチール製の壁で囲まれた部屋の中でもWLX212なら苦もなく接続可能。法律上、電波の出力には制限があり家庭用も法人用も変わりはないはずですが、アンテナ等の設計が異なるだけでこうも違いが出るものかと驚かされます。
YAMAHA WLX212のデメリット(悪いところ)
野暮ったすぎるGUI
コマンド操作が前提となる同社のルータ製品と違ってWLX212はGUIで設定を完結することが出来るものの、肝心のUI/UXが前時代的。
5~6年前に刷新されたヤマハのネットワーク製品のGUI標準に基づいたデザインではあるのですが、多少グラフィカルになったとはいえ未だインターネット黎明期な世界観から脱しきれていない感じがある意味国産製品らしいのですが…(苦笑)。
電源が別売り
WLX212はACアダプタもしくはPoEによる2種類の給電方式に対応していますが、ACアダプタは付属していません。
法人向けAPではPoE給電が基本になるとはいえ必ずしもそうしたケースばかりとは限りませんし、納品前に設定だけ先に済ませておくか…みたいなケースでACアダプタを活用するケースも想定されるので法人用だからこそ同梱が必要と考えます。同梱してもせいぜい1,000円くらいしか変わらないでしょうに…。
「設定反映」が不便すぎる
仮想コントローラーを通じた一元管理という仕組み自体は大変評価できるのですが、そこで行った設定を反映するのに全APが再起動する仕様はいただけません。特に内蔵RADIUSサーバにユーザを追加しただけなのに全APの再起動が必要になるようでは、運用上影響が大きすますし合格点はあげられないかな…。
一応「指定した時間に送信」という方法も用意されていて反映&再起動を夜間に自動反映させるようなことは可能ですが、これを設定しても後から「何時に設定したっけ?」「そもそもちゃんと予約できたんだっけ?」ということを確認する術がありませんし、既に登録されている状態で再度登録すると基本後勝ち。要するに複数人での管理はアウトオブ眼中。
この辺りの仕様はサポートに聞いて判明したのですが、痒いところに手が届かないモヤモヤ感が拭えません。
まとめ
電波の到達範囲の広さや一度安定稼働を始めた後の安定姓だけ見れば「さすがヤマハ」です。
しかし、そこに至るまでの過程や運用に対する配慮不足に対しては少々複雑な感情を抱かずにいられません。