3年ほど前からPCの買い替えを検討していたものの納得のいく仕様を備えた端末が見当たらず先送りを続けていたのですが、HP製ノートPCの中でも最上位グレードにあたるEliteBookシリーズの14型モバイルワークステーション『HP EliteBook 8460w Mobile Workstation』にビビビと来たので思い切ってオーダー。
酸化アルミニウムとマグネシウム合金で構成された堅牢ボディに高い性能と信頼性を詰め込んだワークステーションなだけあって価格は当初20万円を超えていましたが、たまたまキャンペーンが始まってCPUにCore i7-2630QM、メモリ8GB、Blu-Rayドライブ、500GBのハードディスクという豪華な構成にドッキングステーションまで付けて約15万円と相当お買い得になっていたのでこの機を逃す手はない、とばかりに飛びつきました。
組み立てを行っている中国が国慶節の連休に入ってしまった影響で注文から納品までに3週間ほど要しましたが本日無事到着。
ドッキングステーションを同梱しているせいかノートPCにしては大きめの梱包。
最近子供がなかなか寝付いてくれずあまり触れていませんが、自宅の端末の買い替えはほぼ7年ぶりということでテンションもMAXなの頑張ってレビューしておくことにします。
スペック詳細
『HP EliteBook 8460w Mobile Workstation』はHPのビジネス用ノートの最上位グレードにあたる”EliteBook”シリーズに属するモバイルワークステーション端末です。
近年、PCに用いられるパーツの汎用化や高性能化がすすんだことで一般的な端末とワークステーションの違いが曖昧になりつつありますが、現状では搭載されるGPUの違いによって線引きされるケースがほとんど。
一般的なPCが必要最小限の性能しか備えていないオンボードのグラフィックやNVIDIAの「GeForce」、AMD(旧ATI)の「Radeon」などといったDirectXに最適化されたいわゆる”ゲーム向け”なGPUを搭載しているのに対し、ワークステーションは映像や画像の編集、CADのアプリケーションで多用されるOpenGLに最適化された「Quadro」や「FirePro」などといった”プロフェッショナル向け”のGPUを採用するのが通例。
8460wもその例に漏れずFireProを採用していることから、デジタル一眼レフカメラで撮影したRAW画像の現像などに於いて高い信頼性と優れた作業効率が期待できます。
ちなみに、今回購入した端末の詳細スペックは以下の通り。
HP EliteBook 8460w Mobile Workstation | |
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OS | Windows 7 Professional (64bit) |
CPU | Intel Core i7-2630QM (2.0GHz-2.9GHz) |
チップセット | Intel QM67 Express |
メモリ | 8GB(4096MBx2) 1333MHz DDR3-SDRAM |
ストレージ | 500GB (7,200rpm) |
オプティカルドライブ | Blu-ray書き込み ドライブ (DVDスーパーマルチ付) |
webカメラ | 720p HD Webカメラ |
モデム | なし |
有線LAN | Intel 82579LM (1000BASE-T/100Base-TX/10Base-T) |
無線LAN | Intel Centrino Ultimate-N 6300 (IEEE802.11a/b/g/n) |
Bluetooth | Bluetooth2.1+EDR準拠 |
グラフィック | AMD FirePro M3900 (VRAM 1GB) |
ディスプレイ | 14.0インチワイド (1,600×900/最大1,677万色/200nits/300:1/45% NTSC @CIE1931) |
バッテリー | HP3年保証リチウムイオンバッテリ(6セル55WHr) |
説明が若干前後しますが、起動後デバイスマネージャを開くとこんな感じ。
ファーストインプレッション
HPのモバイルワークステーションといえば前モデルまでかなり武骨な外観をしていましたが、現行シリーズでシンプル&スマートなデザインに一新。ベース筐体には丈夫なマグネシウム合金を採用し、たわみのない高い剛性感を実現。本体重量は約2.37kgと決して軽くはありませんが、海外設計の端末にしてはそれなりに頑張っている(のか?)ようです。
発熱量の多いクアッドコアCPUを採用している割に厚さは最薄部で31.8mmと一般的なノートPCと比べても大差はありません。直線的でフラットなデザインを採用していることもありカタログ寸法よりひとまわり小型に感じられる点や、カバンへの出し入れがしやすい点は非常に好感が持てます。
HPはモバイルワークステーション端末にガンメタリックの筺体色を採用しています。天板はヘアライン加工が施されたアルミニウム素材で高級感は抜群。電源を投入すると中央のHPロゴが白く発光する仕掛けになっています。
背面は今モデルから採用された「HP Easy Access Door」と呼ばれるメンテナンス性を重視した構造を採用。背面カバーがワンタッチで開閉可能でメモリーやハードディスクの交換・増設を容易に行えます。
近年、ユーザーによるパーツの追加や交換を想定していない端末もチラホラ見かけますが、こうした流れに安易に便乗しないのはコンピュータの専業メーカーらしくて良いですね。
液晶画面はLEDバックライトを採用する14.0型ワイドサイズ。表面はノングレア(非光沢)処理が施されており、解像度は1,600×900(最大1,677万色)。TN液晶(?)なので視野角がさほど広くないのと輝度・コントラストが低めなのは少しばかり気になるところではあります。
以前、HPのモバイルワークステーションでは「ドリームカラー」と称したIPS液晶が採用されていた例もありましたが、8460wを含む最近のEliteBookは総じてTN液晶で統一されている模様。以前何かの記事で「ワークステーションという商品の位置づけを考えれば大型の外部モニターを別途用意しているケースが大半なので、端末側にIPSを採用するメリットは少ない。」といった関係者のコメントを読んだことがあるのでこれに基づいたHPの方針のなのだと思われます。
実際、わたしもHPのプロフェッショナル向け液晶モニタ『LP2475w』を所有しているのでこれに繋いで作業している限り支障はないと思いますが、外出先で8460wの液晶だけで色調や明度の調整をやれと言われると厳しいかも…。この辺りは状況に合わせた使い方をしていく必要はありそうです。
キーボードはテンキー無しの全91キーで流行りのアイソレーションタイプ。キーピッチは19mm、キーストロークは約2.2mmで使用感はきわめて良好。HP製端末でお馴染みのEnterキーの外側にHOMEやPage Upなどが位置するキー配列なので他メーカーから移行してきた場合などは最初タイプミスもあろうかと思いますが、慣れてしまえばなんてことはないと思います。
ポインティングデバイスには、一般的なタッチパッドに加えHPが「ポイントスティック」と呼んでいるThinkPadライクなトラックポイントの2つを装備。トラックポイントは一度使い慣れると手放せないほど利便性の高いインターフェースでありHPがこれを採用したことは大いに歓迎。タッチパッドはマルチタッチ対応でジェスチャー操作も可能。タッチパッドの左上にはオレンジ色のLEDが埋め込まれており、ここを連続タップすることでON/OFFを切り替えることもできます。
キーボードの左上には電源ボタン、右上には無線LANのON/OFFボタン、QuickWebボタン及びミュートボタンが用意されています。QuickWebボタンはWindows上ではブラウザ起動用のボタンとして動作しますが、電源の切れている状態でこのボタンを押すとわずか数秒で専用OSが起動してウェブ閲覧やメール、音楽再生、写真などを楽しむことができます。端末の高性能化でWindowsの起動時間も改善されてきているとはいえ、ちょっとウェブを見たいだけなのに何十秒も待たされるのは嫌だ!という時には役立ちそうです。
液晶上部には照度調整用の周辺光センサーと720pのwebカメラが配置されています。
外部インターフェイスはUSB3.0ポートx2、USB2.0ポートx1、eSATA/USB2.0コンボポートx1、DisplayPort、ミニD-sub15ピン、1394aポート、マイク入力、ヘッドフォン・ラインアウト出力、有線LANポート、ExpressCard/54、メモリカードスロット、スマートカードリーダーなどがあり、まったく抜かりのない印象。メモリカードスロットは最近の時流に沿ってSDカード(SDHC/SDXC含)及びMMCにのみ対応。メモリースティックは市場からほぼ淘汰されている現状で8460wに限らず多くのメーカー・端末で非対応化が進んでいるので、どうしても読み書きする必要があれば別途リーダ・ライタを用意する必要があります。
バッテリには今回HPが3年保証を行ってくれる6セル55WHrのリチウムイオンバッテリを選択しています。3年保証のない6セル62WHrの通常のリチウムイオンバッテリもラインナップされていますが、本来消耗品であるバッテリの劣化も含めて3年間の保証を行ってくれるは助かります。公称駆動時間は約4.6時間。クアッドコアを搭載する端末としてはかなり駆動時間が長いようですが、実際のところは後々検証する必要がありそうです。
付属する90WのACアダプタは標準的サイズ。しかしながら3ピンのミッキータイプのケーブルを使用しているため、コンセントからACアダプタまでの間のケーブルはわずかに太め。持ち運びの際やケーブルの取り回しには若干不便そうなので必要に応じて短めで扱いやすいケーブルやコンセントに直接挿せるL字型プラグを別途用意すると良いかもしれません。
なお、付属するディスクとしてWindows 7(64bit)の再インストール用ディスクとドライバ類を収めた2枚のほか、今回光学ドライブとしてBlu-Rayドライブを選択したことによりWinDVD 10とroxio MyDVDが添付されていました。
ベンチマーク
外観チェックはこのくらいにして、さっそく参考のためのベンチマークテストを行なってみましょう。
8460wに初期導入されているWindows 7はサービスパック未適用の状態でしたので、SP1をインストールした後にWindows Updateで最新アップデートを全てあてた状態で計測を行いました。まずはWindows 7のエクスペリアインデックスから。
Windows エクスペリアンスインデックス | |
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プロセッサ | 7.4 |
メモリ(RAM) | 7.6 |
グラフィックス | 5.3 |
ゲーム用グラフィックス | 6.2 |
プライマリ ハードディスク | 5.9 |
続いてサードパーティー製のベンチマークを実施。まずはOpenGL系のCINEBENCH 11.5から。
CINEBENCH 11.5 (64bit) | |
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OpenGL | 12.97 fps |
CPU | 4.96 pts |
CPU(シングルコア) | 1.14 pts |
続けて「3DMark05」及び「3DMark03」を実施。
3DMark05 (1024×768) | |
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3DMark Score | 5082 3DMarks |
CPU Score | 17228 CPUMarks |
3DMark03 (1024×768) | |
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3DMark Score | 7807 3DMarks |
CPU Score | 1872 CPUMarks |
8460wに搭載されているFirePro M3900はOpenGLに最適化されているので、DirectXを使用する3DMarkでは悲惨な結果が出るものと予想していたのですが思ったよりは値が伸びています。FirePro M3900のコアはRadeon HD 6470Mと共通らしいので順当なスコアなのかな?まぁ、仕事の合間の息抜きに軽めのゲームを楽しむくらいなら問題はないといった感じでしょうか。
発熱・騒音はいかに
今回入手した8460wはクアッドコアのCPUに加え外部GPUを搭載していることもあり発熱や騒音は気になるところですが、ネットの閲覧など軽めの作業をしている限りほとんど気になることはなく一般的なビジネスノートと変わりありません。
ただし、大量の現像処理をバッチで流したり動画のエンコードをするなどして高い負荷をかけ続けると様子が一変。パームレストやキーボードなど通常手を置いている部分はほんのり暖かくなる程度なものの、キーボード右脇の本体フレームや側面の排熱口周辺は数秒と触れてはいられないほど熱くなります。これにともないファンの稼働音も騒々しくなり、排熱口から吹き出す熱風がマウスを握る右手に容赦なく襲いかかります。
普通のPCはここまでの発熱に耐える設計になっていないので熱暴走を始めたり本体保護のためのリミッターがかかったりするのですが、それに耐えて安定稼働を続けるあたり「さすがワークステーション」といった感じでしたが…なんで排気口を右側に設けたかな。(苦笑)
ただ、放熱に有利なマグネシウムやアルミニウムなどがふんだんに使用されていることもあり、処理がひと段落すると一気にクールダウンするので影響は最小限に留まるものと思われます。
ハードディスクや光学ドライブなども騒音の発生源となりえますが、今回入手した端末に搭載されていた日立(HGST)製の500GB(7,200rpm)のハードディスク、6倍速BD-R書き込みに対応したパナソニック製のBlu-rayドライブ『UJ-240』とも静音性は比較的優秀です。
ドッキングステーション
最後に今回一緒に入手したドッキングステーションについても見ておきましょう。
外見は黒い筐体にシルバーのHPのロゴをアクセントにしたシンプルなデザイン。こちらはEliteBookや8460w専用ではなく昨年リリースされたビジネスPCでも利用可能な汎用オプションとなっています。
背面のインターフェースはUSB2.0x2、パラレルポート、シリアルポート、PS/2×2(キーボード、マウス)、オーディオ入力、オーディオ出力、Display Port、DVI、VGA。正面から見て左側面にもUSB2.0x2が用意されています。DVIやDisplay Portといったデジタル映像出力用や音声入出力といったノートPC本体と重複するポートがドッキングステーション側にも備えられているのはすごく大きなポイント。
自宅で外部モニターやスピーカーを利用しようという場合、ドッキングステーションを介して接続しておけば端末を持ち出す際に一本ずつケーブルを抜き差しする手間がかかりませんし、ケーブルを頻繁に抜き差しすることによる破損や劣化も未然に防ぐことができます。また、本体が適度に傾斜する形になるのでキー入力も楽になるなどのメリットもあります。
セットアップも簡単で別途ドライバのインストールは不要。電源をつないでPCをセットするだけ。
音声出力端子に外部スピーカーを接続しておけば、PCを接続した際に本体スピーカーからの出力はカットされますし、当然外部スピーカーを利用していなければ本体スピーカーから音が出力されます。こういうのって何気に便利ですよね。
まとめ
携帯性を確保しつつ、ワークステーションならではの高い性能と信頼性を担保してくれるHP EliteBook 8460w/CT Mobile Workstation。ハイスペックオフィスPCとしての使用はもちろん、個人向けとしてみてもかなり魅力的な商品に仕上がっているようです。
7年使い続けた『HP Compaq Business Desktop dx6100 ST/CT』同様、長いおつきあいになりそうです!