銀塩カメラ『Nikon U』の調子が悪くなったため『Nikon F80』あたりへの買い替えを検討していたのですが、冷静になって周囲を見回すと市場はいつの間にやらデジタルカメラ一色。
天邪鬼な性格なので敢えて銀塩に拘りたい気持ちもありましたが、嫁に財布の紐を握られている立場からするとフィルム代や現像代などのランニングコストがかからないデジタル化の利点は大変魅力的。また、アナログに固執したところで将来フィルムの調達が困難になるのは火を見るより明らかだし、撮った画像をその場で確認出来るデジタルカメラの方が撮影スキルも向上するだろうとの判断から、このタイミングでデジタル一眼レフカメラへ移行することにしました。
さっそくU本体とキットレンズ『Nikon AF Zoom Nikkor 28-80mm F3.3-5.6G』を下取ってもらい、代わりに手に入れたのは巷で話題の『Nikon D70』とDXフォーマット専用レンズ『Nikon AF-S DX Zoom Nikkor ED 18-70mm F3.5-4.5G(IF)』がセットになった『Nikon D70 レンズキット』。
記録媒体として1GBのSanDisk製コンパクトフラッシュ『SDCFB-1000-801』とマルミ光機の保護フィルター『DHG レンズプロテクト(67mm)』まで同時に買い揃えたため懐には寒風が吹きすさんでいますが、変化とは痛みを伴うものだと思い奮発しました。
ニコンが送り出した戦略的一眼レフカメラ
ニコンのデジタル一眼レフカメラ製品のラインナップに於いて最上位の『Nikon D2H』、中級機『Nikon D100』に次ぐローエンドモデルに位置付けられているD70。
低価格機で攻勢を強めるキヤノンに対抗すべく、ニコンが社運をかけて世に送り出した製品だけあって実売で約12万円という普及価格帯を実現しながらも最新のデジタル技術を惜しみなく投入。従来のデジタルカメラに見られた起動の遅さや連続撮影枚数の少なさといった弱点を克服した歴史の転換点ともいえるカメラで、つい先日も「カメラグランプリ2004」に輝くなどその評価は高まるばかりです。
本体の質感に関してもライバルと目される『EOS Kiss Digital』がそのチープさを酷評されているのに対し、D70は上記機種のD100と比べても見劣りしない出来。膨大なFマウント資産を活かせる堅牢な作りが求められるニコンの一眼レフ製品は昔から重量が嵩みがちですが、D70ではペンタミラーを採用するなど軽量化にも配慮がなされており取り回しも良好です。
いまのところキットレンズとの組み合わせでしか使っていませんが、AFは喰い付きもよくレスポンスも上々。小気味よく切れるシャッターの爽快感もなかなかのものです。約3コマ/秒で最大144コマまでの連続撮影が行える連写性能の高さを活かし、調子に乗って1,000枚近く撮影してみたもののバッテリーはまだまだ余裕のある状態。家族旅行のスナップ目的であれば予備電池を持ち歩く必要もなさそうです。
センサーはニコンが「DX」規格と呼ぶAPS-Cサイズ(約24mm)のCCDが採用されており有効画素数は6.1メガピクセル、ISO感度は200~1600相当に設定が可能です。銀塩カメラとの間には1.5倍の画角差が生じるため、18-70mmのキットレンズなら35mm換算で27-105mm相当。本体にテレコンが内蔵されてるような感覚で最初は少し戸惑うものの、「こんなもの」と割り切ることが出来ればすぐに慣れます。
1.5倍という換算画角は望遠側で有利な半面、広角側では不利に働く可能性もあるので今後はより広角寄りのレンズの拡充が望まれます。
CCDを使用したデジタルカメラでは太陽光など極端に明るい被写体を撮影した際に「スミア」と呼ばれる直線状の白カブリが発生しやすいという情報を耳にしていたので、「逆光は勝利」(「究極超人あ~る」参照)を標榜するわたしとしては大変気がかりだったのですが下の作例程度のシチュエーションではほとんど問題は見られません。
スミアなんて心配してないで、フレアやゴーストを抑える努力でもしてろってことですかね…ハイ。(自戒)
ファインダーにはペンタプリズムではなくペンタミラーが採用されているのは先述の通り。軽量化のみならずコストダウンへの寄与も大いに期待されてのことと思われますが、同機構の弱点とされるファインダー像の暗さはあまり気にはなりません。ただ、APS-Cサイズのセンサーを採用する現在のデジタルカメラが抱える課題のひとつと言われるファインダー倍率の改善は難しかったようで、35mm換算で0.5倍ほどしかないため銀塩カメラに比べ見劣りするのは事実。AF技術も日進月歩で最近はマニュアルでピント合わせをする機会はほとんどありませんが、夜景などの撮影が多い人は気にしておいた方が良いかもしれません。
肝心の画質については、標準設定のままでも十分にシャープでキレがあり個人的にかなり満足度は高め。夕空のグラデーションの滑らかさに関しては銀塩に一日の長があるような気もしますが、6切サイズくらいまで伸ばしでもしない限り気になることはないでしょう。
ISO感度を800まで上げるとさすがにノイズが気になり出しますが、これまでのデジタルカメラの常識からすると画期的なまでに軽減されており天体写真を愛好する人の間でもかなり評価が高いのだそう。確かにRAW現像を前提とするのであればいい感じに仕上げられそうな気がします。
まとめ
ケーブルレリーズや有線のリモートコントローラーを取り付けられないという制約が設けられているとはいえ、上位モデルを凌駕する基本スペックと抜群のコストパフォーマンスで他の追随を許さないD70。デジタル一眼レフの裾野を広げる歴史的な一台といっても過言ではありません。
撮ったその場で画像を確認出来、フィルムの残数を気にすることなく最適な露出を探りながら納得のいくまでシャッターを切れるのはデジタルならではの楽しみ方。画質に関しては銀塩に今一歩及ばない部分があるのも事実ではありますが、カメラをより気軽に楽しめるようになったという点でデジタルへの移行を後押ししてくれたD70の存在には感謝しきり。
現像上がりを待つワクワク感が無くなる点だけがちょっと残念な気もしますが、それに代わるデジタルならではの更なる楽しみ方を見出していければと思います。
作例追加(2004-12-28)
その後に撮りためた写真の中からいくつか作例を追加しておきます。