例年年末には一年の物欲の成果を総ざらいする「買ってよかったもの」な記事を書いていたのですが、2019年は年末ギリギリまで仕事に追われたため敢え無く時間切れ。今年は公私共もう少し余裕のある一年にしたいものです。
で。昨年、仕事絡みで資格取得やら何やらと頑張った自分へのプチご褒美として年明け早々にニコンの『AF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VR』を購入しました。
カメラ歴はそこそこ長いにも関わらずこの手の超広角レンズを所有するのは今回がはじめて。風景写真を撮る際などに標準ズームレンズの広角側の画角に物足りなさを感じることは少なくありませんでしたが、望遠に比べると広角の優先順位はどうしても低くなりがち。それにDXフォーマット用超広角ズームの定番として長く君臨してきた『AF-S DX NIKKOR 10-24mm/f/3.5-4.5G ED』は発売から随分と時間が経過して設計の古さが否めなくなっていましたし、10万円近い価格も購入を躊躇する一因となっていました。
そんな折、ステッピングモーターを採用したAF-Pレンズで実売3万円弱と手ごろな価格ながら約3.5段分の手ブレ補正機能を搭載したAF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VRが登場。当初は描画性能も値段なりだろうと思って見向きもしなかったのですが、来月予定している北海道遠征(半分仕事・半分遊び)に向け「いい加減に広角レンズを…」と思いあらためて調べてみると思いのほか評価する声が多かったことからこのタイミングでの入手となりました。
ようやく手にした超広角レンズ。その実力やいかに!?
気軽に持ち歩ける軽量・コンパクトな広角レンズ
35mm換算で15-30mmとなる超広角ズームの当レンズ。一般に超広角のレンズは多くの需要が見込めない割に光学設計が大変なことから値段も高くなりがちですが、世間のお父さん方のお小遣いで手の届く価格帯におさめてきたあたりニコンの懐の深さを感じます。
低価格を実現出来た理由のひとつとして銅鏡及びマウント、ズームリングやフォーカスリングに至るまでほとんどがプラスチックで構成されていることが挙げられます。結果として外見の安っぽさは否めませんし防塵防滴でないなどの制約はありますが、軽量かつコンパクトな作りは機動性という新たな優位性を与えてくれます。少しでも荷物を軽くしたい旅行や山行に気兼ねなく携行出来る点は大いに評価出来ます。
普段常用している『AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR』と並べてみてもそのコンパクトさは一目瞭然。
「ウソみたいだろ、広角レンズなんだぜ。それで…。」てな感じです。(ネタ元が分からない子はまわりの大人に聞いてみよう。)
先述の通りAF-Pレンズはステッピングモーターが採用されていることからAFは滑らかで驚くほど静か。廉価レンズ専用なイメージが強くあまり良いイメージを持っていなかったAF-Pですがこれはこれで悪くないのかも。
AF-Pレンズの欠点として古いカメラでは使えないという点がよくクローズアップされますが、2017年のリリース当初ならともかく今更気にかける必要はないでしょう。
唯一『Nikon マウントアダプター FT1』との組み合わせに於いて、カメラの半押しタイマーがオフになると再び半押しタイマーがオンになったときにピント位置が変わるため撮影時に再度ピント合わせを行う必要がある点が気になるところですが、Nikon 1に超広角レンズを組み合わせてもあまりメリットはないので問題にはならないと思います。
フィルター径は72mmで付属の浅い花形の『Nikon バヨネットフード HB-81』はいかにも広角用といった雰囲気で撮影意欲を掻き立てます。
最短撮影距離はマクロレンズばりの0.22m。
試しにレンズの箱を撮った一枚ですが、この時フードの端は箱に触れた状態。これなら被写体にグッと寄って遠近感を強調した一コマも狙えるのでさぞかし面白いことでしょう。
レンズ構成は11群14枚。非球面レンズ3枚を用いた最新の光学設計により、歪みや収差を効果的に抑制しているのがウリ…ではありますが、何事も自分で確かめないと気が済まないタチなので『Nikon D500』とこのレンズを1本だけ抱えて長崎に急遽撮影旅行に行ってきました。
目の前の風景をそのまま持ち帰れる超広角の世界
まずはお馴染みの軍艦島(端島)。
昨年の台風17号の影響で船着き場が破損し現在は上陸が禁止されているため、現在は船に乗ったまま島の周りを2周ほどゆっくり回るのみ。その間にガッツリ船酔いしてしまい途中から写真どころではなくなっていた(笑)のですが、元気なうちに撮ったコマを見る限り海や空の青さは素直な発色で好印象です。
夕方から夜にかけて。日没とともにシャッタースピードは遅くなりますが、手振れ補正が効果的に働いて1/2秒くらいまでなら三脚無しでも十分鑑賞に堪えうる画を出力してくれるので無駄に感度を上げる必要はありませんでした。「広角に手振れ補正なんて居るの?」と思ってましたが、あって損はないですね。
最後に稲佐山。
山頂の展望台から見える景色をそのまま切り取れるのは超広角の醍醐味。これは一度ハマると病みつきになりそうです。
まとめ
値段が値段だけに開放F値が少々暗いなど制約もあるとはいえ、フレアやゴーストへの耐性も十分で風景写真などがメインであればお値段以上の働きが期待出来る「撒き餌レンズ」的な1本に仕上がっていると思います。
超広角というと特殊なレンズと思われがちですが、この軽量・コンパクトな作りを活かして肩肘張らず気軽に使って貰いたいレンズです。広すぎる画角ゆえ雑然とした日常も映り込んでしまいがちですが、それも一つの味として生かしてみるのもアリなんじゃないかと。
DXフォーマットのカメラをお使いで次なる一本をご検討中の方に是非おすすめしたいレンズです。
ULTIMA WR 保護フィルターを装着(2020-01-08)
先の作例撮影時はフィルターなどは付けていませんでしたが、超広角レンズはフードが浅く何かの拍子に前玉を傷つけてしまう可能性が高いので保護フィルターを装着しておくことにしました。
標準ズーム以上にケラれや逆光によるゴーストの発生を気にかける必要があるだけに薄枠で反射率の低い保護フィルターが欠かせませんが、ニコン純正の『ARCREST PROTECTION FILTER』はさすがに高すぎるのでHAKUBAの最上位フィルターである『ULTIMA』に撥水/防汚加工が施されたAmazon.co.jp限定の『ULTIMA WR』を購入。
光学性能や耐久性では現状ARCRESTが最強と思われますが、ULTIMA WRシリーズもスペック面ではそれほど見劣りすることはありません。パッと見でも透過率は高そうですし、薄枠設計で着脱しやすいローレット加工も施されており実用面でも支障はなさそうです。
唯一気がかりなのは裏面の注意書きに「レンズクリーニング液は使用しないでください。撥水コーティングが剥がれ、十分な効果が得られなくなることがあります。」との記述がある点。
乾式のクリーニングだと指紋や手垢はなかなか落ちないのでクリーニング液って普通に使いそうなもんだけど…。
どちらにせよARCRESTであれULTIMA WRであれじっくり撮影する時は保護フィルターなんて外してしまうので、この辺の商品で十分でしょう。