APS-Cフォーマットを採用したニコンの最新ミラーレスカメラ『Nikon Z 30』を入手したのでレポートしておくことにします。
今回、Z 30を購入するに至った一番の理由はサブカメラの機材更新。ここ数年、嵩張る一眼レフの携行が難しいシーンでは『Nikon マウントアダプター FT1』を介してFマウントレンズを組み合わせた『Nikon 1 J5』を使用していましたが、J5の1インチセンサーでは暗所ノイズが許容限界を超えることも少なくありませんでしたし、それを画像処理エンジンが補った結果人の顔がかつてニュースを騒がせた復元に失敗したスペインの壁画みたいな仕上がりになってしまうことも多々…。
また、子供の学校行事やピアノの発表会での動画を撮影する際には発熱やバッファの都合上、HD(1080/60p)画質でも最長記録時間が10分程度しかないことも買い替えを検討するに至った一因です。
とはいえ、写真も動画もソツなくこなせる器用なカメラとなると昨今ニコンがソニーなどに後塵を拝していた分野。期待していたNikon 1は後継開発が終了、ほかに代替となるラインナップも存在しない以上ニコン党としては指をくわえて他社の動向を見ているしかなかったのですが、春先のフィールドテストで手にした未発表の新型機にその穴を埋める存在としての期待を感じて正式発表を待つこと数か月…それこそがこの『Z 30』なのですっ!
6月の発表直後に予約をしていたものの出張のため受取りが遅くなってしまいましたが、いつもの通り記念撮影がてら軽く開封の儀やっておきます。
開封の儀
今回わたしが入手したのはNikon Z 30に『NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR』が組み合わされた『Z 30 16-50 VR レンズキット』になります。
もともとはボディ単体を購入するつもり(理由は後述)だったのですが、ボディキャップ替わりに付けっぱなしにしておけるレンズが一本くらいあっても無駄ではなかろうと思い直しました。
今回購入したロットはウィンドマフ&SDカードが同梱される数量限定の「Z 30 発売記念 VLOG応援キャンペーン」対象商品となっています。
背面はこんな感じです。
それでは、いざ開封!
上段にはUSB A-Cケーブルと使用説明書などの冊子類。キャンペーン特典の『SmallRig Nikon Z 30 用 ウィンドマフ 3859』と『SanDisk ExtremePLUS SDXCカード UHS-I 64GB』もこちらに収められています。
下段には緩衝材にくるまれたZ 30ボディ、レンズに加え、バッテリーとストラップ。
こちらが『Z 30 16-50 VR レンズキット』内容一式になります。
外観チェック
折角なのでボディ及びキットレンズの外観も確認しておきましょう。まずはボディから。
EVFを廃したことでコンパクトに纏まりながらも、直線的で無骨なデザインは既存のZシリーズとは一線を画す印象を与えます。
Vlog撮影を意識したカメラだけあって、動画撮影中に赤く点灯するタリーランプがNikonロゴの下に配されているのも既存機種との違いのひとつ。
Zマウントはフランジバック(マウントからセンサーまでの距離)が16mmと、Fマウントの1/3程度にまで切り詰められたこともあり本体の奥行は一眼レフカメラとは比較にならないほどスリムです。
側面のインターフェースは上から順に外部マイク入力、HDMI、USB Type-C。
Type-C接続を通じてバッテリーの充電や本体への給電が可能になったことで、使い勝手が向上することは間違いありません。
上部にはアクセサリーシュー、その左右にはステレオマイクが配されています。
バッテリーとSDカードの挿入口。
EVFの有無だけでなく、バリアングル式モニターを採用した点も従来のZシリーズ機との相違点です。
この辺りは自撮りや動画撮影を意識した変更なのでしょう。
続いてレンズ。
エントリーク向けレンズキットとの組み合わせを前提に設計された製品とのことだけに、性能や耐久性よりもコスト重視な感がありありと伝わってくる感は否めませんが軽量・コンパクトなためお散歩カメラに常用するパンケーキレンズとして使いつぶす前提であれば悪くなさそう。
ZマウントレンズはFマウントレンズに比べ見た目高級感に欠ける…と個人的には感じているのですが、見慣れればこれが当たり前になっていくのでしょう。
Z 30に装着するとこんな感じ。
マウント径の大きなZマウントではレンズ根本のくびれがなくなってセクシーさは幾分削がれましたが、見た目の安心感・安定感は抜群です。
参考までに愛用の一眼レフカメラ『Nikon D500』とのサイズ比較をば。
ファインダーの有無やフランジバックの違いもあり、Z 30の方が縦・横・高さとも圧倒的にコンパクト。バッテリーなどを除く本体だけの重量を見てもD500の760gに対しZ 30は350gと大きな差があります。
勿論、求められるものが異なるカメラなので一概にどちらが良い悪いと言えるものではありませんが、年齢を重ねるにつれ旅先で大きく重たいカメラを持ち歩くのが辛くなってきたのは確かです。(苦笑)
操作性や使用感
『Nikon Z 50』からEVFを削ぎ落としたようなシルエットのZ 30。
Vlogユーザー向けを謳って世に放たれた同機であるもの、片手に収まる携帯しやすいコンパクトなミラーレス一眼としてなかなかに使い勝手良好です。コンパクトといってもグリップが深くホールドしやすいという他のZシリーズのンセプトはしっかり継承。このあたりはニコンの意地が感じられます。
ニコンのカメラは直近の製品を見ても分かるよう、機種ごとにボタンの配置が微妙に異なるため最初は戸惑うこともあります。しかし、大型化した撮影モードダイヤルや動画撮影ボタンの配置などは誤操作防止の観点から評価出来ますし今後のZシリーズの製品にも継承されていくのではないかと思われます。
明るい屋外に持ち出すと光の加減で背面液晶が見えにくいシーンにも遭遇するため「EVFがあれば」と思うこともありますが、そこは割り切りが肝要。そういうものだと思えば意外に気にはならなくなるものです。
背面液晶は3.0型で特別大きくはないため細かなピント合わせが辛く感じるシーンも無くはないのですが、ライブビュー表示はシンプルで明瞭。
バッテリーの持ちは思ったほど悪くありません。Z 30以外にもZ 50、Z fcでも採用されている『Nikon Li-ionリチャージャブルバッテリー EN-EL25』は1120mAhと容量が大きいこともあり、1日200~300枚程度の撮影は難なくこなせます。1泊程度の小旅行であれば予備バッテリー無しでも済むかもしれません。
ちなみに、USB Type-Cケーブルを介して本体経由でバッテリーの充電が可能なことに加え、コストダウンの煽りも受けてEN-EL25用の専用充電器『Nikon バッテリーチャージャー MH-32』は別売りのオプション品扱い。スマートフォン用の充電器でカメラも充電できるという汎用性の高さは旅行先などでは重宝するものの、機材の保管に防湿庫が欠かせない日本で平素からカメラを出しっぱなしにして充電するのは賢明ではないので、専用充電器は別途用意しておいた方が良いでしょう。
撮影サンプル
所用で福岡~小倉を移動した際に検証がてら撮影したものの中から数枚。(いずれもAUTOモードで撮影。システムの都合上、圧縮してアップされている点はご容赦ください。)
『NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR』はキットレンズながら予想に反してキレが良く、空のグラデーションも悪くありません。
一方、レンズの暗さゆえAUTOではISO値やシャッタースピードが思った以上に落ちるケースが見られたので、目的・用途に応じて使い分けるという割り切りは必要になってきます。
感心したのは人物撮影時のAFの秀逸さ。瞳AF・顔検出AFは被写体の人物をリアルタイムに自動追尾してくれるため、ライブビュー撮影が辛いという老眼気味の方であってもピントを外す心配はほぼ無用です。
動画も参考までにサンプルを掲示しておきましょう。
動画は畑違いなので軽々なコメントは避けますが、映像も音も十分なクオリティ。この時は敢えてマフを装着せずに撮影したのですが、風切り音もそこまで気にはなりません…よね?
まとめ
Vlog撮影からこだわりのスチル撮影まで、幅広いシーンでの活用が想定された小型・軽量ミラーレス一眼カメラ『Z 30』。
手荷物のバッグの隙間に入れて気軽に持ち出せるまるでコンパクトカメラのような使い勝手でありながら、優れた光学性能を誇るZシリーズの恩恵も感じることが出来る…一眼を特別な存在から身近なものに変えるカメラの新境地たる一台と言えそうです。
最近は写真も動画もスマートフォンで十分という人も増えてきましたが、「スマホのクオリティでは満足できなくなった」「品質で周囲と差をつけたい」「趣味として撮影の幅を広げたい」という若い方には特にお勧めしたいアイテムです。
また、デジタル一眼レフで本格的な撮影を楽しんでいるコアなカメラユーザーにとってもサブ機として最適な一台となることでしょう。
一度手にしてみれば必ずやその魅力・楽しさを実感頂けるはずです!