先日、設計上の欠陥が原因と思われる不具合のため返品した『HP Spectre x360 15-ch000』(以下Spectre)に代わる新端末を購入しました。
Spectreは不具合以前に絶対的な冷却性能不足のためサーマルスロットリングが頻発して実用に耐えなかったため、今回は薄型筐体や2in1をウリにしない従来型のラップトップ機に候補を限定。当初は法人向け端末を中心にチェックしていたのですが、たまたま見かけた個人向け端末のラインナップの中に『HP Pavilion Gaming 15-cx0000 クリエイターモデル』なる端末を発見。
エントリーゲーミング向けの新ブランド「Pavilion Gaming」シリーズに位置づけられている同製品ですが、従来コンテンツクリエイター向けに展開されてきた「Pavilion Power」シリーズの後継も担うべく4K解像度のIPSパネルや6コア/12スレッドのCore i7-8750H、GeForce GTX 1050Tiなどで性能強化が図されており、かつてワークステーションをトコトン使い倒してきたわたしにっても申し分のない仕様。おまけにキャンペーンとクーポンの併用で3年保証込みでも15万円以下というコストパフォーマンスの高さも決め手となり同機の購入を決断しました。
今回入手した端末の詳細スペックは以下の通り。(正式な型番は「HP Pavilion Gaming 15-cx0108TX」ですが、この記事ではシリーズの総称である「cx0000」で表記を統一します。)
HP Pavilion Gaming 15 クリエイターモデル (cx0000/2018年モデル) | |
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OS | Windows 10 Professional (64bit) |
CPU | Intel Core i7-8750H (6コア/12スレッド/2.2-4.1GHz) |
チップセット | Intel HM370 |
メモリ | 16GB (8GBx2) DDR4-2666MHz |
ストレージ | 256GB SSD (PCIe NVMe M.2) + 1TB HDD (SATA 7,200rpm) |
オプティカルドライブ | なし |
webカメラ | HP Wide Vision HD Webcam (約92万画素) |
有線LAN | Realtek Gaming GbE Family Controller |
無線LAN | Intel Dual Band Wireless-AC 9560 (11a/b/g/n/ac) |
Bluetooth | Bluetooth 5.0 |
グラフィック | NVIDIA GeForce GTX 1050Ti |
ディスプレイ | 15.6インチワイド・UHD(4K) 非光沢・IPSディスプレイ (3840×2160 / 最大1677万色 / 300nits) |
バッテリー | リチウムイオンバッテリ(4セル) |
Spectreの件もあり「HPの個人向け端末は二度と買うまい」と思っていたのですが、そう何度もハズレが続くことはないと信じてます。>日本HPさん
開封&外観チェック
注文から7日、ヤマト便にて荷物が到着したのでさっそく開けて中身を確認。
スリムな段ボールの中にはPavilion Gaming 15-cx0000本体のほか、ACアダプタ、初心者向けの入門書『速効!HPパソコンナビ特別版』、接続ガイドと延長保証の登録を案内する紙だけと至極シンプル。
「シャドウブラック」と称する引き締まった黒の本体色とエッジの効いたデザインが奏功し、15インチノートにしてはかなりコンパクトに感じます。
天板は樹脂製。指紋は少々目立ちそうですがそこまでチープな感じはありません。
天板に施されたロゴはプレミアム製品に付与される4本の斜線からなるものではなく旧来の丸いタイプ。スペックだけ見ればSpectre並みにプレミアムですが、こちらはコストパフォーマンスも重視されているので仕方ないのかも。
インターフェースは左側面手前からSDカードスロット、USB3.1 Gen1 x2。
右側面はヘッドフォン出力/マイク入力コンボポート、有線LAN、HDMI 2.0出力、USB3.1 Gen1、USB3.1 Type-C Gen1、電源コネクタ。
Type-CポートはThunderbolt3やUSB PD(Power Delivery)による外部からの給電には非対応です。
シンプルな外観を纏う中にあって唯一ゲーミングPCらしさが垣間見えるのが背面に大胆にデザインされた排気口。
通常なら排気口はなるべく目立たないように配さるのが一般的ですが、Pavilion Gamingでは筐体デザインにうまく取り込むことで野暮ったさを感じさせることなく高性能なCPUやGPUを気兼ねなくぶん回せるだけのエアフローを確保した模様。
斜め後方に向けて排気されるのでマウスを握る右手に直接熱風が吹き付けて不快な思いをすることがないのもGOOD。以前使っていたEliteBook 8460wでは何度も火傷しそうになっていましたからね…(苦笑)。
裏面。パネルはプラスネジで固定されているだけなので、精密ドライバさえ用意しておけば内部へのアクセスは容易そう。
リサイクルマークはSpectreと同様、シールではなく裏面に直接印刷されています。
端末を開くと現れる液晶パネルはクリエイターモデルを謳うに相応しく非光沢(ノングレア)タイプ。映り込みも少なく長い時間注視しても眼は疲れにくそうです。
キーボードの配列は至ってスタンダード。これでテンキーが無かったら満点だったのですが…。
キーボードは剛性が高くバタつきや不快な沈み込みもなくタイピングは快適。ヘアライン加工が施されたパームレストの質感も悪くありません。キーの側面は白く塗り分けられており視認性も高いです。
同梱のACアダプターはSpectreに同梱されていた物と同じく4.5mm径のプラグを備えた150W出力対応のもの。
最近はUSB Type-Cポートからの給電に対応したノートPCが増えてきましたが、最大消費電力はUSB PDの供給上限である100Wを超えるPavilion Gaming 15は非対応。充電には必ずACアダプターが必要ですが、150W対応のものともなると持ち運ぶには少々かさばるので自宅&職場など複数の拠点で使用する予定のある方は同等品をもうひとつ入手しておくことをおススメします。
PCとは別に梱包されていたのは端末の携行に備えて同時注文しておいた『15.6インチ キャリースリーブ』。
内側は起毛処理が施されているものの、出し入れする際にチャックと擦れて傷がつかないか少々心配になる作り。ただ、クッション性は高く外部からの衝撃には強そうです。
見た目はシンプルで良い感じ。サイズ的に書類を入れて持ち歩くような用途でも使えるかも。
ファーストインプレッションとベンチマーク
クリエイターモデルで採用された4K液晶パネルは詳細スペックが公表されていなかったため実際目にするまで少々不安だったのですが、輝度・発色とも申し分なし。
パネルのハードウェアIDを確認すると『HP Spectre x360 15-df0000』や『ZBook Studio G5』、『EliteBook 1050 G1』などでも採用されている「AUO30EB」となっており、おおよそのスペックはカバー率がsRGB比で94%、輝度324nits。クリエーター向けを謳うにあたって必要十分な性能は担保されているようです。
ちなみにデフォルトのスケーリングは225%。
OSはあらかじめ「October 2018 Update」(Ver.1809)が適用された状態でした。
プリインストールされたアプリは「マカフィー リブセーフ」「NetFlix」「LinkedIn」「Spotify」など。個人向け端末としては多少控えめではあるもののまったく使う予定はないなのでサクっとアンインストール。
今回入手したクリエイターモデルは256GBのSSDと1TBのHDDによる2ドライブ構成となっており、大容量のデータも扱いやすくなっています。(初期状態でHDDはまっさらでした。)
下調べ段階で見かけたレビューによると一部のモデルではLITEON社製のSSDが採用されているようですが、今回入手した端末には『Samsung SSD PM981』(MZVLB256HAHQ-000H1)が組み込まれておりCrytal Disk Markの結果も見ても3,200MB/s超えとかなりの速さ。発熱も比較的穏やかです。
HDDはSeagate製でBarracuda Proシリーズに属する『ST1000LM049-2GH172』(7,200rpm)を採用。
SSDに比べるとさすがに見劣りする数字ですが、大量128MBものキャッシュを搭載していることもありHDDとしては悪くない転送速度だと思います。
サウンドはSpectreと同様旧来のノートPCに比べれば十分合格点を与えられるクオリティとなっています。
HPが提供する最新のBIOSやドライバを適用し、一通りWindows Updateも済ませたらベンチマークを実施。念のためCPU内蔵のiGPU「Intel UHD グラフィックス 630」とdGPU「GeForce GTX 1050Ti」の双方で計測を行っています。
まずはOpenGL系のCINEBENCH 11.5から。参考までにSpectreと比較したグラフも載せておきます。
CINEBENCH 11.5 (64bit) | ||
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UHD グラフィックス 630 | OpenGL | 44.84 fps |
CPU | 12.55 pts | |
CPU(シングルコア) | 1.97 pts | |
GeForce GTX 1050Ti | OpenGL | 70.85 fps |
CPU | 12.56 pts | |
CPU(シングルコア) | 1.95 pts |
CPUに関してはコア数の違いが如実に結果に表れています。OpenGLに関してはGeForceよりRadeonが一枚上手と言われる通りデフォルト設定に於いてはSpectreを下回っています。
続けてCINEBENCH R15。
CINEBENCH R15 | ||
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UHD グラフィックス 630 | OpenGL | 50.89 fps |
CPU | 1132 cb | |
CPU(シングルコア) | 175 cb | |
GeForce GTX 1050Ti | OpenGL | 99.37 fps |
CPU | 1143 cb | |
CPU(シングルコア) | 176 cb |
傾向はCINEBENCH 11.5と同様ですが、実際の活用シーンに近いとされるこちらのOpenGLのテストに於いてその差はかなり詰まっています。
次いで3DMark 11。
3DMark 11 (Performance 1280×720) | |
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UHD グラフィックス 630 | 2,024 points |
GeForce GTX 1050Ti | 9,531 points |
今後の参考としてCINEBENCHの最新版であるR20の結果もあわせて掲載しておきます。同バージョンではOpenGLのテスト項目が無くなっているので、GeForce GTX 1050Tiを有効にした状態で実行しています。
CINEBENCH R20 | |
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CPU | 2427 cb |
CPU(シングルコア) | 420 cb |
ベンチマーク実行中はCPUやGPUの温度にあわせてファンの回転数も上がりますが、新設計の冷却機構が採用されていることや排気口が後方を向いていることなどもありSpectreよりも静かに感じます。パームレストや排気口付近が触れないほど熱くなるようなこともなく、安心して使えそうです。
Thunderbolt3ドック 120W G2の組み合わせ
『HP Thunderbolt3ドック 120W G2』と組み合わせについても少々言及しておくことにします。
わたしも誤解していたのですが、同ドックに備わっている有線LANやオーディオ、Display PortなどはUSB接続の機器として認識されるのでThunderbolt3に対応していないPavilion Gaming 15などの端末との組み合わせであっても問題なく使用出来ます。
PCがThunderbolt3非対応であればドックを介してThunderbolt3対応機器を繋いでも認識されない、ということはありますが現状Thunderbolt3の用途は限られているので特に問題はないでしょう。
唯一残念だったのはPavilion Gaming 15に備わるUSB Type-CポートがUSB PD(Power Delivery)による給電に非対応だった点。USB PDに対応していたSpectreはドックと接続しておけばACアダプタ無しでも運用が可能でしたが、Pavilion Gaming 15はドックとは別にACアダプタの接続も必要。
消費電力が大きいので致し方ない(USB PDは最大100Wなので追い付かなくなる可能性がある)のでしょうが、ケーブルが少し煩わしい感じになる点は残念かも。サードパーティーがUSB Type-CとACアダプタを一纏めにしたL型形状のプラグとか出してくれると嬉しいんですが…。
まとめ
Spectre x360 15-ch000の不具合により急遽手にすることなった『HP Pavilion Gaming 15-cx0000 クリエイターモデル』。
nVIDIA製のGPUを搭載した端末を扱うのは実に20年ぶりくらいで少々不安はありましたが現状特に戸惑うことはなし。
最近はCUDA対応のアプリも増えているので、長く使うことを考えるとこのタイミングでnVIDIAに移行出来たことは良かったのかもしれません。
価格が価格なだけにWindows Helloで用いられるIRカメラや指紋リーダなどのオプションは省かれていますが、個人的には何ら支障なし。ブートドライブであるSSDの容量が256GBと中途半端な点だけがちょっと気になるので早めに換装するつもりですが、それ以外は構成に関して何ら不満はありません。…てか、この値段でこのスペックは異常。こんなにお得な端末を見たのは円高でCPUが割安だったSandy Bridgeの頃以来かも。
HPの個人向けノートにはこれまでロクな思い出がありませんが、幸いPavilion Gamingはこれまで順調。この調子で長く活躍してくれることを願うばかりです。
システム基板&バッテリーの交換(2021-01-16)
昨年の夏頃から端末を動かした際に画面表示が崩れフリーズする事象が度々発生していたのですが、年末にはバッテリーが正しく認識されなくなるという問題まで併発。
どちらの症状も毎度確実に発生するわけではなかったので修理に出しても「再現しませんでした」でそのまま返却される可能性もあったのですが、急がないから…ということで年末にメーカー送り。
結果はシステム基板(マザーボード)とバッテリー双方に不具合が確認されたとのことでどちらも交換が必要との診断。延長保証期間内なのでシステム基板の方は無償でしたが、バッテリーは消耗品とのことで別途16,280円(税込)を支出。痛い出費ですが致し方ありません。
修理後は問題の再発も見られず安定稼働中です。